地域の宝物
弥平とうがらしと
創業者の思いを未来へつなぐ
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湖南市の伝統野菜”弥平とうがらし”を使ったスパイスやソースなど、「ぴりり」シリーズを製造販売する株式会社fm craic。創業者の三峰教代さんと佐々木由珠さんが2011年に立ち上げました。
この事業を引継いだ釘田和加子さんは、現在子育てと事業を両立しながら、弥平とうがらしの知名度を上げるための取り組みや新商品の開発に取り組んでいます。
Interview
代表取締役引継ぎの経緯について教えてください。
湖南市の地域おこし協力隊として活動していた時に佐々木さんと知り合い、出産を控えていた佐々木さんの手助けをするようになったのがきっかけです。
その後、佐々木さんがご主人の転勤で滋賀を離れることになり、代表として事業を引継いでもらえないかという打診を受けました。いろいろ悩みましたが、伝統野菜を使った製品がなくなってしまうのはもったいないと、事業を引き受けることを決意しました。
承諾はしたものの、会社組織になっている事業をどのように引継げばいいのかわからず、いろいろ検索して事業承継・引継ぎ支援センターがあることを知り、相談することにしました。
支援センターでどのようなサポートを受けましたか?
後継者である私と創業者のお二人、支援員の方の三者で、事業の引継ぎの進め方についてお話しする機会があり、株式の譲渡や契約書の締結など、手続きの面も詳しく教えてもらいました。
経営は初めてでわからないことが多く、一人でやっていけるのかとても不安でしたが、サポートしていただいたことで不安が軽減できました。
そして、2021年に事業を引継がれたのですね。
最初の1年は経営も手探りで、引継ぎを機に「ぴりり」シリーズのロゴやパッケージのデザインを一新したほか、SNSで使い方を提案したりと、慌ただしく過ぎていきました。
私自身、中学時代からインドに関心を持ち、JICAのスタッフとしてインド事務所のNGOデスクで仕事をしていたことがあるので、その経験を活かして弥平とうがらしを使った新商品『チキンビリヤニ(インドの炊き込みご飯)』の開発・発売にも取り組みました。
引継いで3年、今どんなことを感じていますか?
弥平とうがらしというこの地域の宝物と、創業者の思いの詰まった商品を残すことができて安堵しています。また、私のインドでの経験と弥平とうがらしとの出会い、創業者の思いをミックスしたビリヤニを発売できたことも良かったと思います。
仕事と子育ての両立はいかがですか?
会社を引継いだ翌年に出産したのですが、出産のタイミングが収穫期に重なったため、関東に転居された佐々木さんに手伝いに来ていただきました。子育てをしながらなので、フルタイムで仕事をすることが難しく、なんとももどかしいところがありますが、パートの方に手伝っていただきながら会社を運営しています。
今後の目標についてお聞かせください。
弥平とうがらしを残していくには作る人、買う人がいないといけなくて、私の役割は買う人を増やすことだと思っています。そのためには美味しいな、楽しいなと思える商品を新たに作っていくことが大切になります。
辛さの中に旨味がある弥平とうがらしですが、実は私も地域おこし協力隊になるまで知らなかったし、残念ながら地元湖南市でもまだそれほど知名度は高くないと思います。県外の人に知ってもらうことも大切ですが、もっと滋賀県民、湖南市民に知ってもらえるような取り組みをしていきたいと思っています。
これまでにも地元の中学校で職業講話を行い、弥平とうがらしの紹介のほか、インドで経験したことが今の仕事につながっていることをお話ししたり、商品の出荷体験をしてもらったりしています。
さらにその先の展開などは考えていますか?
滋賀大学と連携して弥平とうがらしの成分分析を行って、体に良い成分などを活かした商品を開発したいと考えています。また、弥平とうがらしを教材とした小中学校向けの学習プログラムも作りたいと思っています。
そして、弥平とうがらしを通して人との出会いやつながり、学びが広がっていくような事業を行っていきたいと考えています。
湖国に100年以上前から伝わる伝統野菜 弥平とうがらし
「ぴりり」シリーズに使用されている「弥平とうがらし」は、光沢のある鮮やかなオレンジ色のかわいい見た目とはうらはらに、実は激辛!辛味レベルはなんとタカノツメの2倍の辛さ。
しかし、ただ辛いだけではなく、独特の芳醇な香りと11.5度という高い糖度による甘みが魅力のとうがらしです。
「ぴりり」では、その魅力を味わってもらうため、収穫された新鮮なとうがらしはすぐに乾燥し、たとえ手間がかかっても必要な時に粉砕。挽きたての香りが瓶に詰め込まれています。