事業承継事例 丸三ハシモト株式会社様

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絶やしたくない技術がある
強い思いで臨んだ交渉
琴糸づくりに挑み続ける

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丸三ハシモト株式会社

琴糸・三味線糸の製造

滋賀県長浜市木之本町木之本1427
TEL.0749-82-2167

昔から養蚕が盛んな長浜市木之本町で、明治41年の創業以来琴や三味線などの絃を製造してきた丸三ハシモト株式会社。選定保存技術保持者として伝統の音色を守るだけでなく、4代目の橋本英宗社長は現代の演奏家のニーズに応えるべく、新しい試みにも果敢にチャレンジしてきました。

2023年、廃業が決まった関東にあるS社が持つ琴糸ブランドの技術を後世に残すため、同社と技術指導契約を結んだ橋本社長は、継承した技術で新たな事業展開をめざしたいと考えています。

Interview

後継者
橋本 英宗 さん(代表取締役社長)

技術指導契約を結んだS社はどのような会社でしたか?

S社の化学繊維製琴糸は多くのプロ演奏家から高く評価されてきた製品ですが、S社長は同業者とほとんど接触されたことがなく、廃業の話が出る以前から、社長に会って話を聞いてみたいと思っていました。実は一度、直接S社長に電話して「会っていただけないか」と申し入れて断られたこともありました。

そういう経緯があったので、廃業の噂を耳にした時は、「このまま製品のことを何も知らずには終われない」、「製造技術がこのまま失われてしまうのは業界の損失になる」、「S社の蓄積された技術やノウハウを知りたい」という思いが強くなりました。和楽器店からも「S社の技術を橋本さんのところで受け継げないのか?」と言われ、業界全体がS社の廃業を惜しんでいる雰囲気だったように思います。

交渉へ向けてどのように動き始めましたか?

おそらく2022年12月末には廃業されるだろうということで、2022年6月に長浜市商工会に相談に行き、滋賀県事業承継・引継ぎ支援センター(以下、センター)をご紹介いただきました。

「引き継ぎたい意志を伝えることが大切」とのアドバイスを受け、早速S社長へ「技術を教えてほしい」と頼んだところ、一度は承諾してもらえたのですが、その後態度が変わり断られてしまいました。

それでも諦めきれず、何度かやりとりをした後に「技術指導契約なら構わない」と言ってもらえました。それからすぐセンターの担当者に契約を交わすための指導をお願いし、書類を持ってS社長に会いに行きました。

商工会やセンターの支援を受けていかがでしたか?

センターの担当の方から「1回で決まるよう、スピード感を持って交渉したほうがいい」とアドバイスをいただいたほか、交渉の際のポイントをいろいろと教えてもらったので、安心して対応することができました。

契約内容の変更を希望された時も、センターにすぐ相談し、すばやく対応できたことでスムーズに契約に至ることができました。私だけでは、すぐに対応することは、とてもできなかったと思います。

事業承継を振り返って、今のお気持ちはいかがですか?

もし一度断られた時に諦めていたら、ずっと後悔していたと思います。何より演奏家や和楽器店からの期待の声がすごく大きいことに驚きました。期待に応えるために宿題が増えましたが、業界のためにも技術指導契約を結ぶことができてほんとうによかったと思います。教えていただいたことをもっと活かせるように努力しないといけないと思っています。

今後の展開について

引き継いだから終わりではなくて、ここからがスタートです。原糸の太さ、下撚り、上撚りの回転数のバランス、熱加工の温度と時間、ひっぱりの強さなど、いろいろな条件の組み合わせで、当社の機械ならどうなるかを再検査して、S社の糸に近づけていく研究を重ねているところで、和楽器店からも評価していただけるようになってきました。

今後は数値化やデータ化を進めて、いろいろな方のニーズに合うような製品づくりと、当社がこれまで取り組んでこなかった製品にも、新たにチャレンジしていきたいと考えています。

技術や事業の承継を考えている人に伝えたいこと

まず一番は、一人で抱え込まずに、商工会議所や商工会などに相談することをお勧めします。行動を起こしたら助けてくれる人は必ずいるはずです。

そして、引き継ぐ側も、譲り渡す側も「自分がこうしてきたから絶対にこうしてもらわないと困る」というこだわりを捨てることが大切だと感じました。今回、私はS社をリスペクトしているということをしっかりと伝えながら交渉しました。「たいへんそうだから支援してあげよう」というスタンスではなかなかうまくいかないと思います。

承継する相手が親族でも、従業員でも、第三者でも、お互いに敬意をもって対話することが円滑な承継につながると思います。

支援員からのメッセージ

2022年の6月に初めて相談を受けたのですが、その後橋本社長からS社に対してなかなか積極的にアクションを起こしにくい状況だったと思います。先方が「技術指導してもいい」という気持ちになったタイミングで、すぐに引継ぎ支援センターヘ相談いただけたことがポイントになったと思います。

2023年1月になって急なタイミングでセンターにお願いすることになりましたが、橋本社長の意向や状況をあらかじめセンターの担当者にも伝えていたので、スピード感を持って対応していただき、円滑に契約を進めることができました。連携せずにやっていたのでは、チャンスを逃すことになったと思います。いろいろな側面で早めに相談していただくことが大事だということを実感しました。

(米原市商工会 経営支援課長(元長浜市商工会) 川村仁志氏)

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